しあわせの書/泡坂妻夫

しあわせの書/泡坂妻夫
オススメ度(70点/100点中)

あらすじ、
二代目教祖の敬称問題で揺れる巨大な宗教団体"惟霊講会"。超能力を見込まれて信者の失踪事件を追う迷探偵ヨギ ガンジーは、布教のための小冊子「しあわせの書」に出会った。41字詰15行組みの何の変哲もない文庫サイズのその本には、ある者の怪しい企みが隠されていた。そしてマジシャンでもある著者が、この文庫本に試みた驚くべき企てとは!?

まず入手が困難だったこの本。本屋で新書を探しても、各地のBOOKOFFを回っても見つからず、最終的には図書館の取り寄せで借りることで読むことができた。それもそのはず、この本は"1987年出版"であり、私が生まれる一ヶ月前に発売されたものなのだから。年でいうと先輩です。

この迷探偵ヨギ ガンジーシリーズは、凶悪な殺人事件を解決するのではなく、超能力や超常現象を暴くといった内容です。そして今回「しあわせの書」でのテーマは"読心術"。惟霊講会の初代教祖様はこの読心術で団体を巨大なものとし、二代目の候補所も読心術でその地位までのぼりつめた。
ここでいう読心術は、相手が心に思ったことをいいあてたかのようにみせかけることで成立する。いわばトリックである。

話の内容としては特に目新しいことはなく、主人公一行が少し個性的かな〜と思うぐらい。会話が多く、ページ数も多くないのですぐ読めてしまう。物語自体の落ちも意外性はあるものの、沢山のミステリー小説を読んできた人には物足りなさがあるに違いない。そう、物語自体の落ちはである。この本の凄いところはそこではない。
くそー!著者にまんまとやられたよー!というミステリー小説の部類では有名な「しあわせの書」ですが、読み終わった私の感想は、『先入観に騙された!』という感じです。この感想の意味は読んだことある人だけが分かるはず。

オススメ度は内容としての評価よりも著者がこの本に施した巧妙なトリックを評価しての点数です。
この本の題名「しあわせの書」。そして布教のための小冊子「しあわせの書」。この二つが同じなのは意味があるということ。著者がこの文庫本に施した最大のトリックにあなたは気付くことできるのか!?